リスクリワードの計算方法|損小利大の落とし穴とR倍数・期待値
リスクリワードとは何かを、R倍数・損益分岐の勝率表・期待値の計算例で解説します。損小利大でも比率を上げるほど有利とは限らない理由と、コストの影響も、独自データで確認します。

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リスクリワードとは、損切り(SL)までの距離と利確(TP)までの距離の比です。20pips の損失を覚悟して40pips の利益を狙うなら、リスクリワードは 1:2(2R) です。勝ったときの利益が、負けたときの損失の何倍かを示します。勝率とセットで見ないと、その手法で資金が増えるのか減るのかは分かりません。
このページでは、R倍数の考え方、リスクリワード別の損益分岐の勝率、期待値の計算例、そして「損小利大にすれば有利」とは限らない理由を、独自のデータと実際のトレード計画で整理します。
リスクリワードの計算方法
エントリー価格から損切り価格までを「リスク」、エントリー価格から利確価格までを「リワード」として、それぞれ pips で測ります。
リスクリワード = リワード ÷ リスク
| エントリー | 損切り | 利確 | リスク | リワード | 比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.1000 | 1.0980 | 1.1020 | 20pips | 20pips | 1:1 |
| 1.1000 | 1.0980 | 1.1040 | 20pips | 40pips | 1:2 |
| 1.1000 | 1.0980 | 1.1060 | 20pips | 60pips | 1:3 |
売りの場合も、方向が逆になるだけで考え方は同じです。ここで出る比率は、あくまで「計画」の値です。経済指標の前後や市場の寄り付きではスプレッドが広がります。また、損切りがスリッページ(注文価格より不利な価格での約定)で滑ることもあるため、実際の結果は計画とずれます。詳しくは スプレッドの解説 と スリッページの解説 をご覧ください。
R倍数:すべてのトレードを同じ物差しで測る
R倍数は、1回のトレード結果を「リスクとして取った金額」を1として表す方法です。損切りにかかったときの損失を1Rとします。
- 損切りにかかった:-1R
- 2Rの利確に届いた:+2R
- 建値(BE)で決済した:0R
- 損切り幅の半分だけ逆行して決済した:-0.5R
10ドル(約1,500円)をリスクにしたトレードと、100ドル(約15,000円)をリスクにしたトレードは金額が違います。しかし、どちらも「+2R」なら価値は同じです。月間の成績を見るときは、pips ではなく R を合計します。pips は通貨ペアや損切り幅によって意味が変わるためです。リスク金額からロット数を出す手順は ポジションサイズの計算 と 1トレードのリスク で説明しています。
実際のトレード計画をRで書く
下のチャートは、2026年10月28日の EURUSD 1時間足に引いた計画です。エントリーは強気のオーダーブロック(OB。構造を更新する上昇の直前にある最後の陰線)の上端である 1.11321 でした。損切りは OB の下に ATR(平均的な値幅を示す指標)の0.2倍の余裕を足した 1.11247 で、距離は約7.4pips です。利確は 1.11469 で、リスクの2倍、つまり 2R です。

このトレードでは、損切りより先に利確に届き、+2R になりました。ただし、これは1回のサンプルです。損切りにかかって -1R になっていても、計画としては同じ価値がありました。
損益分岐の勝率
リスクリワードが決まると、コスト前に損も得もしない勝率が決まります。
損益分岐の勝率 = 1 ÷ (1 + R)(R はリワード ÷ リスク)
1:1 なら勝率50%が必要で、1:2 なら3回に1回勝てば足ります。下の表には、スプレッドと手数料の合計がリスクの0.1R分かかる場合(例:損切り10pipsに対してコスト1pips)も並べました。
| リスクリワード | 損益分岐の勝率(コストなし) | コスト0.1Rを含む場合 |
|---|---|---|
| 1:0.5 | 66.7% | 73.3% |
| 1:1 | 50.0% | 55.0% |
| 1:1.5 | 40.0% | 44.0% |
| 1:2 | 33.3% | 36.7% |
| 1:3 | 25.0% | 27.5% |
コストが c(R単位)のとき、式は (1 + c) ÷ (1 + R) になります。損切り幅が小さいほどコストの重みは大きくなります。1pips のコストは、損切り10pipsなら0.1Rですが、損切り3pipsなら約0.33Rです。

注目してほしいのは曲線の形です。1:1 から 1:2 に変えると必要な勝率は約17ポイント下がりますが、1:2 から 1:3 では約8ポイントしか下がりません。比率を上げるほど、得られる余裕は小さくなります。
期待値:勝率とリスクリワードをまとめる
期待値は、1回のトレードあたりの平均的な結果をRで表したものです。
期待値 = 勝率 × 平均の勝ちR − 負け率 × 平均の負けR
負けを常に -1R とすると、勝率を W、リワードを R として W × R − (1 − W) になります。
| 勝率 | リスクリワード | 計算 | 期待値(1トレードあたり) |
|---|---|---|---|
| 45% | 1:1.5 | 0.45 × 1.5 − 0.55 | +0.125R |
| 60% | 1:0.5 | 0.60 × 0.5 − 0.40 | -0.100R |
| 35% | 1:2 | 0.35 × 2 − 0.65 | +0.050R |
| 25% | 1:3 | 0.25 × 3 − 0.75 | 0.000R |
| 20% | 1:5 | 0.20 × 5 − 0.80 | +0.200R |
この表から3つのことが分かります。勝率60%でも、勝ちが小さければ資金は減ります。勝率35%でも、勝ちが負けの2倍あれば資金は増えます。そして 25%・1:3 の行は損益分岐の曲線上にあり、それだけでは優位性とは言えません。
期待値を金額にすると
口座1,000ドル(約15万円)の1%をリスクにすると、1R は10ドル(約1,500円)です。1行目の期待値 +0.125R は、1トレードあたり平均 +1.25ドル(約190円)です。200トレードなら平均で約 +250ドル(約3万7,500円)、複利を考えない場合の増加率は25%です。これはあくまで平均です。この条件(勝率45%、1:1.5、200トレード)で2万回シミュレーションしたところ、リスク1%でも8.9%は、200トレード後に元の資金を下回りました。勝ち負けの並び方で結果が大きく変わるためです。経路の詳しい話は ドローダウン をご覧ください。
コストで期待値はどう変わるか
スプレッドと手数料がリスクの0.1R分かかるとします。1行目の期待値は +0.125R から +0.025R に下がり、減少幅は80%です。35%・1:2 の行は +0.05R から -0.05R になり、プラスがマイナスに変わります。わずかな優位性は、コストで簡単に消えます。損切りが小さいスキャルピングで特に注意が必要です。詳しくは スキャルピング をご覧ください。
リスクリワードは高いほどよいとは限らない
「1:5 なら必要な勝率は17%だから有利」と考えたくなります。しかし勝率とリスクリワードは連動します。利確が遠いほど、損切りにかかる前にそこへ届く確率は下がります。
極端な例で考えてみます。値動きに方向性がまったくなく(ランダムウォーク)、コストもゼロだとします。損切りの R 倍の距離にある利確に、損切りより先に届く確率はちょうど 1 ÷ (1 + R) です。これは損益分岐の勝率と同じなので、どのリスクリワードでも期待値は0です。この世界では、比率は勝つ頻度を変えるだけで、利益が出るかどうかは変えません。現実の相場は完全なランダムではなく、コストもゼロではありません。そのため、優位性があるとすれば比率以外から生まれます。たとえば構造に対する損切りと利確の置き方や、トレードする時間帯です。
損切りを狭くするとよくかかる
もう一つの側面が損切り幅です。4つの市場でランダムにエントリーしたと仮定し、ATR(14) の k 倍の損切りが24時間以内にかかった割合を数えました。

EURUSD では、0.5 ATR の損切りは88%、1 ATR は78%、1.5 ATR は66%、2 ATR は56%、3 ATR は40%でかかりました。USDJPY はやや低く(86%、73%、61%、51%、34%)、ゴールドはその中間(87%、74%、62%、52%、35%)でした。つまり、見た目のリスクリワードを良くするために損切りを極端に狭くすると、損切りにかかる確率が大きく上がります。それが報われるのは、そのレベルで止まる理由がある場合だけです。私たちの別の分析では、オーダーブロックなど SMC の典型的な位置で価格が持ちこたえた割合は約半分でした。つまり、これらは「注目する場所」であって、確実に反応する場所ではありません。詳しくは オーダーブロック と 損切り をご覧ください。
データ出典:Yahoo Finance の1時間足を用いた OnForex の分析(2024年1月〜2026年10月、ゴールドは2024年6月〜2026年10月、COMEX 金先物)。ランダムエントリーは、シグナルなしで任意の時刻に入ったと仮定したものです。手法の良し悪しではなく、価格がどれだけ動くかを測っています。
自分のリスクリワードの決め方
- 先に損切りを決める。 比率が良く見える位置ではなく、「ここを抜けたら考えが外れる」位置に置きます。ノイズやスプレッドの余裕も加えます。
- 利確は届く位置に置く。 直近の高値・安値や、レンジの反対側などです。サポートとレジスタンス が参考になります。
- 比率を測る。 自分の最低ラインに届かなければ見送ります。比率に合わせて利確を動かしてはいけません。
- コスト込みの損益分岐の勝率を確認する。 100トレード以上のテスト結果の勝率と比べます。
- すべてのトレードをRで記録する。 期待値は毎月更新します。
部分利確(1Rで一部を決済して損切りを建値に動かす)は結果の形を変えますが、悪い手法を良くするわけではありません。使う場合は、計画上のRではなく、実際に得られた平均Rを記録してください。
よくある間違い
- 毎回 1:5 を狙う。 勝率が下がり、連敗が長くなり、続けられなくなります。
- スプレッドを無視する。 損切り5pipsに対してスプレッド1pips は、スリッページ前でも0.2Rです。
- 損切りを広げる。 計画の-1Rが-2R以上になり、計算した比率が意味を失います。
- 勝率だけで判断する。 「勝率70%」は、勝ちと負けの大きさが分からなければ何も言えません。
- 10トレードで手法を判断する。 勝率45%の手法では、200トレード中に8連敗が普通に起きます。サンプルが少ないと誤解します。トレード心理 も参考にしてください。
- 計画のRと実際のRを混ぜる。 期待値は、部分利確やスリッページを含めた実際のRで計算します。
私たちのデータから分かること
EURUSD・GBPUSD・USDJPY・ゴールドで、損切りを1 ATR に置いたランダムエントリーは、24時間以内に73〜78%の割合で損切りにかかりました。ランダムな入り方には優位性がないため、この値は「どんな手法もコスト後に超えるべき基準」です。Rの考え方は「何が必要か」を教えてくれますが、「それを持っているか」は教えてくれません。それを確かめられるのは、コストを含めた正直なテスト結果だけです。
関連ページ
- ポジションサイズの計算 と 1トレードのリスク:1Rが何ロットかを決める。
- ドローダウン:-1Rが続くと口座がどうなるか。
- リスク管理:全体の枠組み。
- 損切り:1Rを決める損切りの置き方。
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