ADXの見方と設定|トレンドの強さを測るDMIの使い方と検証
ADX(平均方向性指数)と +DI・-DI の計算式、20・25・40 の目安、トレンドとレンジを見分ける使い方を解説します。4つの市場で「ADX が高いと続くか」を検証した結果も載せています。

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**ADX(Average Directional Index、平均方向性指数)**は、トレンドの強さを 0〜100 の数値で表す指標で、上昇か下落かの向きは示しません。1978年にJ・ウェルズ・ワイルダーが考案し、初期設定は期間 14、一般に 25 を超えるとトレンドが出ている、20 を下回るとトレンドが弱いかレンジだと見られます。ただし、4つの市場で検証すると、ADX が高いことは「すでに強い動きがあった」ことを示すだけで、次の 20 本が同じ向きに続くかどうかは分かりませんでした。実際の使い方は、売買のタイミングを測ることではなく、トレンド向きの方法とレンジ向きの方法のどちらを使うかを選ぶことです。
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ADXが測るもの
ADX が答えるのは、「トレンドはどれくらい強いか」であり、「どちらへ向かっているか」ではありません。急上昇も急落も、同じ高い ADX になります。向きは、2 本の補助線の +DI と -DI で見ます。この 3 本をまとめて **DMI(Directional Movement Index、方向性指数)**と呼び、多くのチャートソフトが 1 つのパネルに表示します。
- +DI が -DI より上: 上向きの動きが、下向きの動きより強い。
- -DI が +DI より上: 下向きの動きのほうが強い。
- ADX: 2 本の差が開いている状態がどれだけ続いたかを、平滑化した値。片方が優勢だと上がり、拮抗すると下がります。
ADXの計算式
計算は長く見えますが、各段階は単純です。すべて、ワイルダーの平滑化で 14 本ぶん平均します。
- 方向性の動き(DM)。 各足を前の足と比べます。+DM は、今日の高値 − 前日の高値(前日の安値 − 今日の安値より大きく、0 より大きいとき)です。-DM は、前日の安値 − 今日の安値(反対の条件)です。条件を満たさなければ 0 です。
- トゥルーレンジ(TR) は、次の 3 つのうち最大のものです。高値 − 安値、高値と前の終値の差の絶対値、安値と前の終値の差の絶対値。TR を平滑化した平均が ATR です(ATRの記事を参照)。
- +DI = 100 × 平滑化した +DM ÷ ATR、-DI = 100 × 平滑化した -DM ÷ ATR です。
- DX = 100 × |+DI − -DI| ÷(+DI + -DI)
- ADX = DX を平滑化(14 本)した平均
数字で計算してみる
金のチャートで +DI が 12、-DI が 36 なら、DX = 100 × |12 − 36| ÷(12 + 36)= 100 × 24 ÷ 48 = 50 です。+DI と -DI がどちらも 24 なら、DX は 0 です。ADX はこうした DX を平滑化した平均なので、動きがゆっくりで、遅れて出ます。トレンドが始まって、しばらくしてから確認する指標です。
ADXの目安
| ADX の値 | よく使われる見方 |
|---|---|
| 20 未満 | トレンドが弱い、またはレンジ |
| 20〜25 | 境目。トレンドの始まり、または終わり |
| 25〜40 | トレンドが出ている |
| 40 超 | 非常に強いトレンド(50 超はまれ) |
これらは慣例で、決まりではありません。ワイルダーは 25 を目安にしていて、多くのチャートソフトが 25 に線を引いています。もう 2 つ大切な点があります。
- 値だけでなく傾きを見る。 ADX が上向きならトレンドが強まっていて、下向きなら、まだ高い数値でも弱まっています。
- 天井は反転ではない。 高い水準から ADX が下がり始めるのは、動きが鈍っているということで、小休止、押し・戻り、反転のどれもあり得ます。
ADXの設定
初期設定は期間 14 で、25(または 20 と 25)に線を引きます。MT4・MT5 では「Average Directional Movement Index」、TradingView では「Average Directional Index」または「DMI」という名前です。
| 期間 | 特徴 |
|---|---|
| 7〜10 | 反応が早いが、ノイズが多く、25 付近を何度も行き来する |
| 14 | ワイルダーの初期値 |
| 20 以上 | なめらかで遅い。だましの始まりが減る |
期間を短くすると、しきい値を超える回数が増えます。長くすると、減って遅くなります。ほかの指標と同じように、数字を変えるときは過去のデータで試してください(バックテストの記事を参照)。
チャートで見る

この金のチャートで、10月上旬から中旬の ADX は、約 17〜38 の間を動いています。価格は約 4,100〜4,250 の間で上下していて、レンジの局面です。+DI と -DI が何度も交差していて、ADX も低めという、典型的な形です。
10月21日から様子が変わります。-DI が約 35、+DI が約 7 まで離れ、ADX は約 20 から 26 日に約 52 まで急に上がり、価格はこの間に約 4,150 から約 4,030 付近まで下がります。強い下降トレンドの教科書的な姿です。
大切なのはその後です。ADX は 26 日に天井をつけて下がり始め、価格は約 4,095 まで戻して、ADX は約 33 に向かって落ち着いていきます。ここで「ADX が下がったからトレンドは終わった」と読むと外れます。価格は 30 日までに 3,900 を割る新安値をつけ、ADX も約 41 まで再び上がりました。ADX は、すでに起きた動きの強さを説明しただけで、次に何が起こるかは言っていません。
検証結果:ADXが高いと、トレンドは続くか
「ADX が高ければトレンドが続く」という定番の見方を、簡単な形で検証しました。4時間足で、直前の 20 本の動きの向きと、次の 20 本の動きの向きを比べ、そのときの ADX の値で分けています。ADX が高いことが「続く」を意味するなら、ADX が 25 を超えたあとの続く割合は、50% を明確に上回り、20 未満のあとの割合も上回るはずです。
出典:OnForex による分析。Yahoo Finance の1時間足、2024年1月〜2026年10月(金は2024年6月〜2026年10月、COMEX 金先物)。4時間足は1時間足から作成。スプレッドとスリッページは含みません。
| EURUSD | GBPUSD | USDJPY | XAUUSD | |
|---|---|---|---|---|
| 4時間足のうち ADX が 25 超だった割合 | 48.4% | 46.8% | 38.7% | 54.7% |
| ADX 25 超:次の 20 本が直前の 20 本と同じ向き | 49.1%(n=424) | 52.8%(n=411) | 47.5%(n=343) | 44.7%(n=398) |
| ADX 20 未満:同じ測定 | 49.1%(n=277) | 41.8%(n=292) | 54.3%(n=315) | 53.9%(n=204) |
数字の読み方
- 高い ADX は、続くことを予測しませんでした。 ADX が 25 超のあとに同じ向きに続いた割合は 44.7〜52.8% で、コイン投げ前後か、やや下回っています。期間中に上昇した金では、高い ADX のあとの継続は 44.7% と、50% を下回りました。
- ADX が高いときと低いときの差に、一貫性はありません。 GBPUSD は ADX が高いほうが良く、USDJPY と金は ADX が低いほうが良い数字でした。1 セル 200〜420 件で、8 セルを調べれば、数ポイントの差は誤差の範囲です。11 ポイントの GBPUSD の差も、慎重に見るべきです。
- 強い動きのあとには、押し・戻りが来やすい。 ADX が高いのは、大きな動きのあとです。市場は、その一部を戻してからまた進むことがよくあります。これは「トレンドは存在しない」という意味ではありません。
- この定義では、市場はトレンドにいる時間が長い。 ADX が 25 超だった4時間足の割合は 38.7〜54.7% でした。「25 超」は珍しくないので、これだけでエントリーの合図にはなりません。
結論は、ADX は今いる市場の姿を説明する道具として使う、ということです。「ADX が 25 超で、移動平均線まで押したら買う」のような組み合わせのルールは、今回は検証していません。そのようなルールに優位性があるとは、このデータからは言えません。
ADXの使い方
1. エントリーの前に、方法を選ぶ
最も筋の通った使い方は、方法の切り替えです。ADX が 20 未満なら、レンジを想定します。ブレイクアウトのエントリーはだましになりやすく、価格帯から価格帯への逆張りのほうが理にかないます。ADX が 25 超で上向きなら、トレンドを想定します。すべての動きを逆張りで狙うのは危険で、トレンド方向への押し目買い・戻り売りが定番です。トレンドトレード、サポートとレジスタンス、ブレイクアウト戦略の記事もあわせてご覧ください。
2. 強い動きに逆らわない
ADX が 40 を超え、片方の DI がもう片方を大きく離しているとき(10月21日以降の金のチャートのような状態)、底を狙って買うのは、さらに下がる動きに逆らう形でした。高い ADX は、逆張りへの警告であり、売りの合図ではありません。
3. +DI と -DI のクロス
DI のクロスは、+DI が -DI を上に抜ける(強気のクロス)、または下に抜ける(弱気のクロス)ことです。金のチャートの 10月上旬から中旬の静かなレンジでは、+DI と -DI が何度も交差していて、どのクロスもだましの始まりでした。よくある対策はフィルターです。ADX が 20 または 25 を超え、上向きのときだけ、DI のクロスを使います。
4. 低い ADX からの上向き
ADX が 20 未満から上向くのは、静かだった相場が動き出す兆しのことがあります。ただし向きは分からないため、エントリーより、チャートを見直す合図として使います。ボリンジャーバンドのスクイーズや、マーケットストラクチャーの構造の更新と組み合わせます。
計算例:方法の切り替えとして使う
EURUSD の4時間足で、ADX が 2 日間 17 のままで、価格が 1.1580〜1.1640 の間を動いているとします。これはレンジだと判断します。その後、価格が 1.1640 を上に抜け、ADX が 22 から 28 に上がり、+DI が -DI を大きく上回りました。
- ADX は、方法がレンジからトレンドに変わったことを示します。そこで、レンジの上限での逆張りをやめます。
- ブレイクアウトを追いかけず、抜けた価格帯(たとえば 1.1645)への押しを待ちます。
- 損切りは押しの安値の外側に置き、エントリーから 25 ピップスとします。
- 口座残高 1,000 ドル(約 15 万円)の 1% = 10 ドルをリスクにします。1 ロット(標準ロット)の 1 ピップスは約 10 ドルなので、ロット数 = 10 ÷(25 × 10)= 0.04 ロットです。
- 価格がレンジに戻り、ADX が 20 を下回れば、この考えは間違いだったので撤退します。
価格とロット数は説明用です。ニュースやロールオーバーの前後はスプレッドが広がり、損切りがスリッページで滑って約定することがあります。ポジションサイズと損切りの記事も参照してください。
ADX・移動平均線・パラボリックSARの違い
| ADX | 移動平均線 | パラボリック SAR | |
|---|---|---|---|
| 答えるもの | トレンドはどれくらい強いか | トレンドの向きと平均の位置 | トレーリングストップの位置の目安 |
| 向き | +DI と -DI で見る | 傾きと価格の位置 | 価格の上下に出る点 |
| 主な使い方 | トレンド向きかレンジ向きかを選ぶ | トレンドのフィルター、動的な価格帯 | 利確・損切りの追従 |
組み合わせると使いやすくなります。向きは移動平均線、強さは ADX、出口はパラボリック SAR やトレーリングストップです。移動平均線とパラボリック SARの記事も読み比べてください。
よくある失敗
- ADX を売買の合図にする。 ADX には向きがありません。
- ADX の低下を反転と読む。 弱まっているだけです。金の例では、ADX が天井をつけたあとに安値を更新しました。
- ADX が 25 を超えたからエントリーする。 ADX は遅れる指標で、今回のデータでは 25 超の足が 4 割から 5 割以上もありました。
- レンジで DI のクロスを売買する。 ADX が低いときは、クロスが何度もひっくり返ります。
- 損切りを決めない。 どの考えにも、間違いだと分かる価格があり、ロット数はその距離から決まります。
- コストを忘れる。 ADX が 25 付近を行き来しやすい短い時間足では、スプレッドとスリッページの影響が大きくなります。
関連ページ
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